「ブックオフの『株主優待券』が無くならない理由」→???
BLOGOSで、内容がいい加減な記事を見かけました。
ブックオフの「株主優待券」が無くならない理由という記事です。
記事の内容を要約すると、ブックオフの株主である筆者が、ブックオフの株主優待が廃止されない理由について熱く語っています。
ここからは、当ブログ管理人が疑問に思った点を中心に、記事の内容を批判を兼ねて紹介していきます。
経営状況があまり芳しくない企業が優待券を出し続けるのは会社にとって負担になるのでは?と思う人がいるかもしれないが、優待券は額面通りの現金を配っているわけではないので、多分、どれだけ経営が悪化したとしても無くなることはないと思う。そういう意味では、株主にとっては絶対的に保証された配当金とも言える。
(BLOGOS「ブックオフの「株主優待券」が無くならない理由」より引用)
そんなわけないだろー。
と一言で言ってしまうのは雑すぎるので、ここから丁寧に反論していきます。
経営状況があまり芳しくない企業が優待券を出し続けるのは会社にとって負担になるのでは?と思う人がいるかもしれないが、
(BLOGOS「ブックオフの「株主優待券」が無くならない理由」より引用)
その通りです。優待券を出し続けるのは会社にとって負担です。
それでも、優待券を出す負担を上回るメリットがあるから企業は株主優待を続けますし、メリットがないと判断すれば企業は株主優待を改悪・廃止します。
優待券は額面通りの現金を配っているわけではないので、多分、どれだけ経営が悪化したとしても無くなることはないと思う。
(BLOGOS「ブックオフの「株主優待券」が無くならない理由」より引用)
「優待券は額面通りの現金を配っているわけではない」というのは正しいですが、「どれだけ経営が悪化したとしても無くなることはないと思う」というのは間違いです。なぜなら、優待券を出し続けることは、会社にとって負担だからです。
そういう意味では、株主にとっては絶対的に保証された配当金とも言える。
(BLOGOS「ブックオフの「株主優待券」が無くならない理由」より引用)
近年、株主優待の改悪・廃止が相次いでいることを筆者は知らないのでしょうか。日本経済新聞の株主優待廃止「3大理由」から探る リスクの見極め方という記事に書いてあります。
株主優待が「絶対的に保証された配当金」と言える根拠が知りたいです。
その他の企業と同様に、お買物券の本質は“原価で商品が買える”という代物だと言える。ブックオフの場合、「販売されている商品価格ではなく、仕入れた原価でお買い物ができますよ」と考えると解りやすい。
(BLOGOS「ブックオフの「株主優待券」が無くならない理由」より引用)
この文章は正しいのですが、説明を端折っているので、読者には分かりづらいです。
株主はタダでお買物券がもらえるのだから、「原価で商品が買える」のではなく「タダで商品がもらえる」のではないか、と考える人は多いでしょう。
確かに、表面上は「タダで商品がもらえる」のですが、株価を踏まえると「タダで商品がもらえる」とは言い切れません。
まず、株主がお買物券を使って商品を買った場合、会社の利益が減ります(その理由は、下の会計仕訳で数字を用いて説明します)。
会社の利益が減ることは、株主に帰属する一株当たり利益も減るということですから、株価の下落につながります(もちろん、会社の利益が減ったからといって、他の要因で株価が上昇することはあり得ますが)。
株主優待で得した分と、株価の下落で損した分をトータルで考えると、「タダで商品がもらえる」とは言い切れないのです。
で、なぜ「販売価格で商品が買える」のではなく「原価で商品が買える」と言えるのかというと、株主がお買物券を使って商品を買うということは、会社が仕入れ値で商品を配るのということとイコールだからです(その理由は、下の会計仕訳で数字を用いて説明します)。
例えば、200円で販売されている本を仕入れた金額が10円の場合、お買い物券を持った株主に対しては仕入れ値の10円で本を販売しているというイメージになる。
(BLOGOS「ブックオフの「株主優待券」が無くならない理由」より引用)
10円で仕入れた本を、株主がお買物券を使って200円で購入した場合の会計仕訳を示すと、下記の通りです(説明のための仕訳なので、勘定科目などは実際に会社が計上しているものと異なります)。
【借方】棚卸資産(資産) 10 【貸方】現金(資産) 10
【借方】交際費(費用) 200 【貸方】発行商品券(負債)200
【借方】発行商品券(負債)200 【貸方】売上(収益) 200
【借方】売上原価(費用) 10 【貸方】棚卸資産(資産) 10
上記の仕訳の収益から費用を引くと、利益が計算できます。
200(売上)-200(交際費)-10(売上原価)=-10
ということで、会社の利益は10円のマイナス(10円の損失)で、本の仕入れ値とイコールです。
「お買い物券を持った株主に対しては仕入れ値の10円で本を販売しているというイメージになる」というのは不正確。「仕入れ値の10円で本を配っている」というのが正確です。
ゆえに、実質的に2000円のマイナスになるわけではなく、100円程度のマイナスで済む計算になる。(あくまでも、このケースの場合)
(BLOGOS「ブックオフの「株主優待券」が無くならない理由」より引用)
この記述は正しいのですが、次の文を読むと頭が混乱します。
それに、お買い物券をもらった限りは、必ず全て使用することになるので、売れ残った本を売るチャンスでもあり、10円で仕入れた本が200円で売れれば、190円のプラスになる。
(BLOGOS「ブックオフの「株主優待券」が無くならない理由」より引用)
マイナスちゃうんかい!!!
とツッコんで終わらせるのは雑なので、ここも丁寧に反論していきます。
まず、「お買い物券をもらった限りは、必ず全て使用することになる」とは限りません。ブックオフの店舗が近くにない株主は、お買い物券をもらっても使わない可能性が高いのではないでしょうか。
「売れ残った本を売るチャンス」と書いていますが、株主がお買い物券をもらったからといって、売れ残るような商品をわざわざ買うでしょうか。
「10円で仕入れた本が200円で売れれば、190円のプラスになる。」という文を読んだときは、腰を抜かしました。正しくは「10円で仕入れた本が200円で売れれば、10円のマイナスになる。」です。
「仕入れ値の合計金額」と「優待券販売による利益」を比較すると、新刊ばかり買う人でない限り、大抵は後者の方が高くなるので、結局、優待券を配った方がプラスになる可能性の方が高くなる。
(BLOGOS「ブックオフの「株主優待券」が無くならない理由」より引用)
上で述べた通り、「10円で仕入れた本が200円で売れれば、10円のマイナスになる。」ので、「優待券を配った方がプラスになる可能性の方が高くなる。」なんてことはあり得ません。
だから、仮に赤字経営になっても優待券は無くならない。
(BLOGOS「ブックオフの「株主優待券」が無くならない理由」より引用)
繰り返しになりますが、優待券を出し続けるのは会社にとって負担です。だから、赤字経営になったら優待券が無くなる可能性は高まります。
そして、これも繰り返しになりますが、近年、株主優待の改悪・廃止が相次いでいることを筆者は知らないのでしょうか。
ライバルの「古本市場」は株主優待を改悪した
ちなみに、ブックオフのライバル「古本市場」を運営する株式会社テイツーは、2021年2月10日に株主優待の改悪を発表しました。
ブックオフだって、今後の業績や株主政策次第では、株主優待を改悪ないしは廃止をする可能性はゼロとはいえません。
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